ECD

ECDが死んでめちゃくちゃ悲しいから色々適当に書く。枕元!ペットボトル!テトラポット、砕ける波!

最初にECDを認識したのは確か高校二年か三年くらいで、スーパーカーのインタビュー目当てで買ったクッキーシーンの Side B の表紙がECDだった。SEASON OFF が出た頃?その頃はラップといえばドラゴンアッシュとかラッパ我リヤとかしか知らないくらいだったんだけど、ECDがインタビューの中でドラゴンアッシュについて「事務所から許可もらわないとラップも出来ないなんてダサい」とか言ってて当時ドラゴンアッシュファンだった自分はなんだこいつ〜〜〜って思ったけど確かにECDの言うとおりである。でもドラゴンアッシュのことはいまだに好きで、そういう情けなさ弱さがいいなーと思っている。

ECDはいつでも最前線にいて、新しい音楽を常に紹介してくれていた。そのクッキーシーンのインタビューでも気になっているラッパーとしてイルリメを紹介していた。確かまだ一枚目のイるreメ短編座が出たばっかりくらいで無名といっていいころ。それでイルリメに興味を持って、SPOTLIGHT records のホームページを見に行ったらイルリメの 2nd の Quex から何曲か試聴できた、確か。そこで何度も聴いた。そんなふうに過ごしていた。他にも DJ 雨雲とかヤベミルクとか。あとは磯部涼古川耕がやってた HP/JP ってネットラジオイルリメがゲストで出て、アルファベッツ (やけのはら+かまさん) とか疎外 King MC とかを紹介してた。そういうところで知ったミュージシャンの CD を通販で買って聴くようになって、一気に世界が広がっていった。SPOTLIGHT records は京都のメトロというクラブを拠点にしているらしいと知って、それで京都に住みたくなって京大を受験した。なんとか受かって、沖縄から京都に引っ越して、色々な人に出会って、それで今の自分になった。

めちゃくちゃ話がずれたけど、ECD はそういうふうにして自分の世界を広げてくれた。ただの音楽じゃなくて、その後ろに膨大な文化の厚みの圧力があった。ECD が出るってことで RAW LIFE ってイベントの存在を知って、イベント自体には行けなかったんだけどネットでイベントの写真を色々見てたらものすごくいい写真を撮る人がいて、それで写真に興味を持つようになったりもした。なんか色々調べてその写真家のブログを探し当てた。植本 from アルテミスイチコっていういかれた名前のブログだった。そのあとECDと植本一子が結婚して、全然知り合いでもなんでもないけど嬉しかった。ずっとあとになってから植本一子がスタジオを開いた。記念写真を撮ってもらった。嬉しかった。

SEASON OFF に入ってる GO! って曲でECDが本名と住所をラップしてて、よくわからないまま衝動に駆られてその下北の家までいった。呼び鈴を押す勇気はなくて、郵便受けに近藤とコテラと作った自分たちの音源を投函して帰った。いま考えたら普通に気味悪かったと思う、すみません。内容も聴けたものじゃなかった。その時の自分たちのなかではすごいものが出来たってちょっと思っててマジキックに送ったりもしたけれど。

ライブも観に行った。一番覚えてるのは、確か京都の今は亡きウーピーズでの ECD+illicit tsuboi、やけのはらとか FLUID とか Yolz in the Sky とか dOPPO とかが出てたと思う。いや違ったかな?わかんない。とにかく覚えてるのは、会場に向かおうと八坂神社のあたりを歩いてたら前から明らかに異常な雰囲気の人が歩いてきて、見たら illicit tsuboi だったことと、ライブ中にECDじゃなくてツボイさんだけライトあたってたこと、ECDが "イェーーー!!!!"とシャウトしただけで一気にわけがわからなくなるくらいテンションが上がったこと。ECDの声には心を持っていかれる力がある。なにかのインタビューでECDが「ラップミュージックは声がよければもうそれだけでいい」みたいなことを言ってたのを思い出す。同意します。あとそのときのことで覚えてるのはやけのはらがゲットワイルドの7インチを自慢げに取り出して掛けたことと、YUKI の JOY を低速で掛けたこと。ところで今調べたらこのやけのはらとかが出てたイベントは「僕の京都を壊して vol.8」で、ECD+illicit tsuboi はそのイベントには出ていない。記憶が混同していた。

渋谷にあった Mixrooffice (今の dommune) で ECD が12時間DJするって企画があって、お金なかったけど夜行バスかヒッチハイクか何かで東京までいった。Mixrooffice に向かう途中でみたグラフィティをなんとなく覚えている。ものすごくアシッドに作り変えられた「翼をください」を延々とぶつけられてフロアでクタクタになった。また新しい世界を見せてくれて楽しかった。

むかし ECD BBS っていうネット掲示板があって、そこでECD2ちゃんねらーとかとよく論争していた。詳しい内容は覚えていないけどアントニオ・ネグリマイケル・ハートの「帝国」って本の話とかしてた気がする。マルチチュードって言葉をそこで知った。大学入ってからオールドスクールな左翼の友達とかが出来てイラク反戦デモとか参加したりしてたんだけど、その頃からECD市民運動に参加するようになってて勝手に親近感を覚えていた。素人の乱とかサウンドデモとかかっこよかった。「言うこと聞くよなやつらじゃないぞ」ってコールが出来たのはこの時期くらいかな?それがのちに、反原発運動とか反安保運動のなかで「言うこと聞かせる番だ俺達が」に変化していって、本当に感動したというか勇気をもらったというかまぁ上手く言えません。イラク反戦のころのECDはどっちかというとアナキストで、「言うこと聞かない」つまり権力に屈しないっていうのもアナキスト的発想から出たものだったと思う。それが「言うこと聞かせる番だ俺達が」になったというのはつまり、民主主義の担い手として主権者として国家権力に相対するってことで、成熟です。そういったECDの思想の変化に自分も影響されながら成長していった。ということはECDは人生の先生です。ECDIARY に始まりその後の著作も大体読んだ。本当に計り知れない影響を受けた。しばき隊とかC.R.A.C. とかの反レイシズム運動も ECD のおかげで知ることができた。市民運動の盛り上げ方とか差別との闘い方とか、自分の中で停滞していたものが大きく変わった。

ECDの好きな曲ランキングを考えていたが上手くまとまらない。たぶん一番人気があるのはさんぴんCAMP前後、ホームシックとか BIG YOUTH の頃なのかな。私は SEASON OFF が一番好きなんだけど振り返ってみると ECD のキャリアの中でもかなり特異な作品になっている気がする。ベストを除くとメジャーでは最後のアルバムで、アル中で入院して色々なものを失ったあとに出来たもの。ものすごくカラッとして冷めてて、詞もかなり抽象的、どこかずれてて狂っている。めちゃくちゃかっこいい。ベスト盤「MASTER」の最後三曲も SEASON OFF の路線で、特に「過去形のパラダイス」はもう本当にかっこいいので全人類に聴いて欲しいけど iTunes とかにもないし CD も廃盤っぽい?じゃあ CD 貸します。あとは SEASON OFF 以降だと「DJは期待を裏切らない」「関係ねー!」「HAIKU」「実在のひと」「Time Slip」「ECDECADE」「Wasted youth」「LUCKY MAN」とか。あーーーーー。

 

ずっとECD聴きながらこれを書いてたんだけど死んでしまったのに全く変わることなくECDの音楽が聴けてレコードって永久じゃんすごい。

レコード レコード レコード レコード レコードを聴いている今日も!